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執筆者の写真TOMOIKI SEKINE

空間を指揮する


・飲食業界も『場』作りが重要になっていく

・現状コンセプト作りや共有空間作りが弱い

・強いコンセプトがこれからはマスト 

・よりコンセプトを落し込み、空間を指揮できる『コンダクター』が必要

・空間の指揮はテクノロジーによっても可能になる

・楽しむ。の多様化に乗り遅れるな

飲食業界は個々がそれぞれのお店を繁盛させるのはもちろんですが、フードホールや屋台村のような別々の店を集めた『場』作りが流行している気がします

ボク自身も『京都タワーサンド』への店舗出店やマルシェ、屋台村のようなイベント出店を色々と展開させていただいています

その経験から感じるのは、中途半端な『お任せします』がコンセプトの弱い『場』を生んでいる場合が多いということです

コンセプトが弱いというのはマス化には向いている(100人が100人不満ではない)かもしれませんが、多様性が享受されやすくなり非マス化の進んでいく今後の社会ではそういったコンセプトが弱い『場』は、大きなムーブメントや新たな表現を生むことは難しく、その行く末は危ぶまれるでしょう

『作ってお終い』になってしまっていませんか?

その改善に必要なものの一つに『コンダクター』の存在を提案します

様々な店が集合している『場』にはそれを集め、管理する『プロデューサー/マネージャー(以下P/M)』の役割をする会社や人、出店するお店『プレイヤー』がいます

先程の中途半端な『お任せします』とは『P/M』側と『プレイヤー』側の双方から発生しています

『P/M』側は管理はしますが、『個性を活かす』という名目で、個々の店の内装や商品に積極的な介入はしません

『プレイヤー』側は『場』の共有空間や他の『プレイヤー』に関して意見を控える場合が多いですし、意見を発する場合の多くはネガティブな要素に対してであり、全体としての発展を求める意見ではありません

お互いがその部分を『お任せします』という言葉で濁しアップデートを怠ってしまっているのです

その打開ために『P/M』は『コンダクター』としての役割を担いよりコンセプトの強い『場』を作るべきであり、その存在は『プレイヤー』を個々の領域から飛び出させ『場』全体として当事者意識を持つきっかけになると私は考えます

『コンダクター』の役割は大きく2つです

『世界観』と『空間』のコンダクトです

コンダクトの意味するところは『行使、先導、指揮』であり、『コンダクター』と『プレイヤー』の役割はオーケストラの『指揮者』と『演奏者』に置き換えることができます

オーケストラでの『指揮者』の役割はその公演のコンセプトを作り、練習のなかで個々の個性を引き出しつつもコンセプトの方向に導くこと(世界観のコンダクト)と、本番でそのコンセプトを実際に表現するための現場監督(空間のコンダクト)であり

『演奏者』はそれぞれのクオリティを高め、個々の最高のパフォーマンスを求めながらも『指揮者』の意図を組み、実際に表現することでしょう

同じように『場』における『コンダクター』の役割は

『世界観のコンダクト』=『場』全体としてのコンセプトをしっかりと決め、コンセプト作り、内装設計の段階から個々のプレイヤーの個性を引き出しつつも『場』の全体像を確立すること

『空間のコンダクト』=実際の営業のなかでより流動的な空間の機微を捉え調整していくことです

前者は言わずもがなですが、特に後者『空間コンダクト』の意識が現状特に低いのですが個人的にはここの強化が『場』作りの肝だと思っているのでここではそこに要点をおきます

『より流動的な空間の機微』というのは『人』と『時間』の機微であり、調節すべきは『光』と『音』です

例えば100平米の同じ内装設計の空間であってもそこに5人の『人』がいる場合と50人の『人』がいる場合では『光=照度、温度』も『音=選曲、音量』も変化させなければ快適な空間にはならないの当然です

そして『時間』というのも設計段階で日中、夕方、夜、くらいは想定しますが、季節やその日の天気、より人感覚の時間(例えば金曜日の夜9時と日曜の夜9時では時間の感覚は違うはずです)というところまで目を向けられてはいないでしょう

それ以外にもどういったコンセプトを設定するか、ターゲットは誰かなど幾重もの要素を踏まえなければなりません

本当に良質でコンセプチュアルな空間作りにはこの『人』『時間』の機微を把握し、『光』『音』を操る、まさに『指揮者』の役割が欠かせません

コンダクターの能力として重要なのはコンセプトに沿った空間を提案し、実現できることです

空間の変化を察知できること、空間の変化と人の感覚の相互作用をイメージできること、その作用を空間を使ってコントロールするロジックを作れることです

ここでハードルになるのはいずれもが感覚での判断になり、人によって感じ方が違うという当たり前の問題ですが、その問題は人の育成はもちろんテクノロジーでの解決が今後見込めます

現在あらゆるセンサーはより高感度且つ多角的になっています

照度や音量を察知できるのはもちろん、人の数、人の動き、温度、湿度など実に様々なものをより正確に察知できます

これらのセンサーを空間に組み込めばあらゆる場面を想定したより細かな設定が可能であり、『コンダクター』が常時現場にいなくても『空間のコンダクト』は可能になるでしょう

もちろん常にアップデートしていくことは大前提ですが

しかしながらその設定でさえ感覚である以上すべての人に100点という解答はありません

そこでこそ『世界観のコンダクト』段階でどれだけコンセプトを練り、そのコンセプトにそった空間コンダクトを貫けるかが重要です

強いコンセプトを持つということは個性の押し売りをするということであり、それは差別化と非マス化の両面を内包していることを当然のように前提とすべきです(マス化を前提にしたコンセプトほど中途半端に終わるものはありません)

しかしその先にこそ新たなムーブメントと表現が構築できることを忘れてはいけませんし、より多様性が享受されていく社会においてその挑戦こそがその『場』が生き残っていく必要条件になっていくことでしょう

またコンセプトをはじめから打ち出すことでそこに賛同する『プレイヤー』が集まりやすくなり、そこでは中途半端な『お任せします』が蔓延ることなく、互いがアップデートを積極的に図ることのできやすい『場』ができるでしょう

みんなが楽しめる。は幻想ではありませんが

みんなが同じもので同じように楽しめる。は幻想です

楽しみたい人が楽しめる。が並行して多様に存在することがこれから目指すべきものじゃないでしょうか

そのために強いコンセプトを築き、それを指揮していくことのできるコンダクターの必要を提案します


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