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執筆者の写真TOMOIKI SEKINE

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自分は自分がなぜ新しいカクテルを考えるのかその理由がわからない

何のために、なんてのはより見当もつかない


カクテルなんて無くてもかまわないものだ

複雑なカクテルなぞにしなくても旨い酒はいくらでもある

フルーツにしたってパティシエに渡した方が存分に使ってくれる

さらに地球環境を考えるなら無駄以外の何物でもない、というか害だ


珍しくテレビを見ていたら近い未来(20年後くらい)には甚大な水不足が世界中で顕著になるらしいと叫ぶ番組をみた

アフリカのある地域では一日に2リットルのバケツ一杯の水しか使ってはいけないらしい

その近郊ではワインが作られ世界中に輸出されている

ちなみに一杯のグラスワインをつくるためには109リットルの水が必要らしい


ならワイン造りなんかやめて、そのワイン作りに使われる水を住民に渡せばいい。まぁ、そんな簡単な話ではないことは誰にでもわかる。が、それもまた事実だ


酒なんてそんなもんだ

必要な言い訳はいくらでも挙げられる。だけどいくら挙がってもそれは言い訳を脱しない

別に必要不可欠ではないし、場合によっては害で、見方によっては金持ちの道楽でしかない

そんな中でもカクテルは特に無駄で、害で、道楽でしかないと思う

個人的にはなんの反論もない


その流れで考えると、新しいもの。なんてのはより無駄だ。

カクテルにしても、料理にしても、新しいものを作り出すためには試作もするし失敗もする

そのたび無駄に食材を消費している

今この瞬間も空腹に襲われている人はたくさんいるのに

それならまだ常に失敗も試作もいらない同じものを延々と作って人々の腹に放り込んでいた方がまだ無駄がない


まったくもって嫌になる

ちなみに結構マジでそんなことを考えて時々落ち込む


ただそんなことを思いながらもボクは今日も新しいカクテルを考える

それはなぜだろう

自分の稼ぎのためか

一部の道楽好きの金持ちに褒めてもらえるからか

それともSNSでいいねがもらえるからか


自分は幸運なことにまぁある程度無駄を享受できるほど経済的に恵まれた日本という国にいる

コロナとかあって前ほど稼ぎはないし、なかなかカツカツな状況な今だけど、それでも飢えを感じることはそれほどないし、水もバケツ何杯分かもわからないほど当然のように垂れ流している

もし自分が今の状況と違う状況にいたらどうしているのだろうか

もし何日間も満腹を感じることのないような状況だったら、もし毎日バケツの水とにらめっこするような状況だったら。。

きっと自分はカクテルなんか作っている余裕なんてないし、カクテルなんて作ったり飲んだりしてる奴らを恨めしく思うと思う


じゃあそんな状況の自分は何をするのだろう。。

こんなことは実際そういう状況ではないから言えることだと思う、それでもボクはそのような状況にいる自分もきっと『新しい何かを生み出そうとしている』と思えてしまう

カクテルではないだろう、食べるものかもしれないし、なにかの道具かもしれない。それとももっと違う何かかもしれない。だけど、きっと今日も新しい何かを考えている。と信じられる。というか新しい何かを考えていない自分がまったく想像がつかないのだ

それはきっと状況だけではない。きっと場所が違っても、時代が違っても、ボクが知的生命体である限り、ボクという何かはその時々で自分の興味のある分野で『何か新しいものを生み出そう』と日々考えていると思う

それは宿命なのか、性格なのか、性癖なのか、一種の精神疾患なのか、どういった言葉で言い表されるものなのかはわからない

どんな状況でも時代でも『新しいものを生み出そう』という欲求はボクを支配する

言ってしまえば、より上位なものなのだ。ボクにとっては。

『新しいものを生み出したい』という欲求は。


社会の情勢や地球の未来、少し遠くの人々の飢え、そして恐らく自分の生き死によりその欲求はより上位なのだ

別に状況や環境から乖離しているわけではない。ただその欲求にかかれば地球の未来も人の生き死にも『ただのアイディアのきっかけ』にしかならないのだ

命懸け、という言葉が成り立たない

殉じる、という言葉が常用になる

それほどに自分の命や他人の未来より圧倒的に上位であるとしか思えない

それは息をすることに近いのかもしれない

生きるために息をしなくては!そう思って息をする人は多くはないだろう

息をする。結果生命を維持できてる。その感じに近いのかもしれない


さらにその『新しいものを生み出したい』という欲求が人々の幸せに繋がる方向性ならまだ救いようがある

地球環境を改善させるものや、人や社会の抱える何らかの問題を解決できるような、手助けになるような何かなら、その動機の根源がどんなクソみたいなものでもまだ意味がある


だけど自分が作るのはただのカクテルだ

きっと誰かを救うことも何かを解決することもないカクテルだ

いよいよそう書いている自分が嫌になってくる


わかった!『新しい何かを生み出したい』という欲求がどうしても抗えないものだということは許容しよう

だけどその欲求が向かう先がなぜに『カクテル』なのだ!もっとあるよ色々。人の役にたつものが。その欲求自体はそんなに悪くないかもしれないんだからもっといいことに使おうよ

そんな風に自分を諭したいくらいだ、ホンマに。


それども、カクテルなんだよ

心が惹かれるのは、細胞が動くのが、欲求が満たされるものは

考える前に考えてる自分がいるんだからしょうがない、と諦めるしかないとも思う

それに現状前述のような追い込まれた状況にないからこそカクテルなんて嗜好品なのだということなのだろう。そればかりは境遇の幸運に感謝



なまやさしく楽観的に考えれば『人間の歴史はそういう一見何の役にも立たないような新しい発見や新しいモノの発明の積み重ねで発展してきたんだよ。新しいものを生み出そうという欲求そのものがとても掛け替えのないものなんだよ』という程度の安っぽい慰めは思いつく

だけどそれで一時の肯定感は得られても、完全無欠な納得が得られるほど自分は高性能ではないらしい


自分は自分がなぜ新しいカクテルを生み出すのかわからない

だけど知りたいとは思う

その答えを考えることを諦めたくないとは思う

そして、そんなことよりも、もっと新しいカクテルを生み出したい


自分でもため息がでるほど諦めも悪ければ、救いようもないので今日はこの辺で離脱



そんなわけで今まで生み出してきたレシピをダウンロード販売します

とりあえず9品から始めますが、これからも新しいものを順次アップしていく予定です

その意気込みを書こうかと思って書き始めたのにこんな有様になったのは何故だ。。


レシピは面白い内容になっていると思います

またただのカクテルのレシピとしてだけでなく、バーテンダー、バリスタ、料理人やデザイナー、そしてすべての『新しい何かを生み出そうとする誰か』にインスピレーションを与えることのできる刺激物になっていればという思いで作成しております


​用法用量を守って正しくお使いください




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