10年を振り返って。ヒップホップとしてのnokishita
- TOMOIKI SEKINE
- 4月10日
- 読了時間: 4分
更新日:4月10日
Hiphopとしてのnokishita。
ヒップホップの三大要素は『DJ、ブレイクダンス、グラフィティ』と言われ、今ではそこに『MC、知識、スケートボード、ファッション。。。』なども並ぶものになっている。
と、まぁそんなヒップホップ論をここで語りたいわけでない。そういったヒップホップの要素をより抽象度を上げて考えることでそこには『社会をハックする』というヒップホップの本質や役割が見えてくる。正確にはハックし返す、Re-ハックである。
社会、わかりやすく言うのならば街でもいい。もともと自分たちの街であった場所がアメーバみたいに自己増殖する資本主義と潔癖症と神経症の民主主義によって漂白され、綺麗で、安全で、無味無臭に塗り替えられてしまいクソつまらない場所に慣れ果ててしまった。そのかつて自分たちのものであったはずの街を奪い返す行為、塗り替え返す行為、リハックする行為がヒップホップの本質や役割であると自分は思ってる。
DJは元の音源をハックしブレイクビーツすることはもちろん、街で音を鳴らし仲間を集め"場"をハックし、ブレイクダンスは既存のダンスの常識をブレイクすることで身体性や感覚をハックし、グラフィティは無味無臭になってしまった街を文字通り塗り替えハックしここは自分たちの街なんだと叫ぶ。スケートボードで駆け出せば普段のつまらない街並みがすぐにエキサイティングな自分のテリトリーに変わる。
そのように手段は違えどクソつまらない実存としての街を、そして社会という概念をハックしていく営みがヒップホップである。
そしてそれは社会のハックであると共に自分の感覚や感受性のハックでもあることも非常に大切なことである。クソつまらない街並みはどんなにハックしても変わらないかもしれない、だけどそこにヒップホップによって自分の視点を埋め込むことで同じ街が少しはマシに感じられる。あ、ここにグラフィティがかけそうだな、この道をスケボーでランしたら楽しそうだな、そういう風に街を見る、感じることで自分と社会の関わり方を多少はマシなものに塗り替えることができるのだ。
そして、これは残念なことではあるが、創生当初はリハックとしての役割があったヒップホップだが時代とともに我々の置かれた状況はさらに悪化し、もはや今の我々はそういったヒップホップ要素的なものがないとつまらない壁に囲われて社会に飼いならされているということに気が付くことができなくなってしまっているのだ。

私の店nokishita711は2025年4月で10周年を迎えた。
実存としてのnokishitaは営業形態や提供してるものは10年の間にどんどん変わっていき今のスタイルに辿り着いたわけだが、nokishitaの示したい概念はずっと変わらない。それは『あなたのつまらない常識や固定観念を壊すこと』である。
私はDJもブレイクダンスもグラフィティもしないが『クソつまらない社会をハックしていく』という本質はヒップホップのそれと一緒だと思ってる。
今までnokishitaでやってきた様々なことはすべてその本質をどうやって皆に伝えるか、ということの試行錯誤の残骸である。
新しい食材の組み合わせ、肉や魚を液体にする、そういったことで今まで当たり前だった食べることや食べ物の概念をハックできるのでは、道端に生えている雑草が実はおいしいということを知れば同じ街を違った目線で楽しめるのではないか、虫を食べておいしかったら生き物の捉え方は変わるのではないか、ゴミとしてしか見てなかったらものがかっこいい花入れやインテリアになるとしたら、砂糖や柑橘ジュースを使わずにカクテルが作れるとしたら、もちろん発想や技術的な新しい挑戦もあるがそれの奥にあるのはいつだって常識や固定概念への挑戦である。そして我々を囲い込む壁をぶち壊して我々を本当に包み込んでいる“世界”を感じるきっかけを見つかることである。そうやって色々なハックを試行錯誤した10年であった。
しかもこれは、今振り返ればそうであった、ということであってその時々の自分はそんな概念的なものは考えずにただ自分の感じる社会への違和感に対して足掻いていただけであった場合も多い。
そんな学のある人間ではない。何か目的地があってそれを逆算して進んでいくような合理性も持ち合わせてない。ただ行き当たりばったりの積み重ねだった。所かまわず野ぐそする野獣のように自分の衝動を発散してきただけのしょうもない人間だ。
ただ、その道のりを現在地から振り返ってみれば結局すべては同じ道の半ばであったということだ。それは結局その想いが自分にとって逃れることのできない『価値観』だったということなのだろう。
なのできっとこれからも変わらない。この先もずっと試行錯誤の旅は続く、クソつまらないこの社会をハックするための道を、無味無臭なこの社会に美しさを見つけられる感受性を探す道を、SwingしてBopしてHipしてHopしてSing a songしながら進んでく。多分この道は間違いだらけだしまともじゃない。だけどそれが自分の性だとあきらめ半分に笑って歩む。なのでみなさまも適当に見守っていただければ幸いです。
2025年4月10日 セキネトモイキ
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